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東方とか他の二次とかふと思い付いた一次とかのSSを載せるかも知れない。 でも基本は徒然なるままに綴って行きます。
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11.02.19:33

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  • 11/02/19:33

11.09.22:07

幻想郷大戦#3

東方SS四十七作目。
たまには激しく戦闘物。


とくと見ろ、か弱き人間達よ!
我ら鬼の真の力、その目に焼き付けて逝くが好い!――伊吹萃香

 朝が訪れると、境内の中に昨夜の妖怪達の姿はなかった。ただ霊夢が箒を片手に持ち、平生の通り掃除をしていた。だが、その白い袂には見るもおぞましい血がこびり付いている。赤い袴にも、黒い染みが出来ている。それだけで霊夢がしていた事など一目瞭然であった。そして、博麗神社の境内の外、入口に構えられた鳥居の下や、神社を囲むようにして茂る木々の上には、昨日とは違う妖怪達の群れが等しく張られた結界を突破しようとしては、無残な姿を晒していた。


 空は快晴、白い雲は穏やかに流れ行く。大地が血に染まっている事など、知らないかのように。

 

 

 


 

 

 

 霊夢が昼時になって、結界の強度が弱まっていたのを修正し、お茶を飲みながら休憩に甘んじていた時分に、空から放たれた幾筋もの光の柱が、耳を劈く轟音を轟かした。霊夢は何事もなかったかのように、お茶を啜っている。が、片手に持っていた符に向かって何か呪文めいた言葉を唱えた。するとその符は音もなく燃え、灰と化す。それと同時に神社の周りに張られていた結界が消えた。ところへ魔理沙が霊夢の前に降り立った。


「一体何なんだ、あれは。呑気にお茶なんて飲んでるが」
「私が聞きたいくらいだわ。昨日の夜中からあれだもの」
「……お前の悪い勘は、本当に当たるな」
「ありがと。ところで、結界消しちゃったから、今度はあんたが張り直してくれると手間が省けるんだけど」


 事もなげに云って見せる霊夢に向かって、呆れたような表情を見せて、魔理沙は判ったよと云って宙に浮かんだ。そうして博麗神社の中心の上空に着くと、詠唱と共に周囲に魔法陣を展開し、それを神社の四隅に飛ばした。そして次の瞬間にはそこから地面に向かって垂直な柱が降り、神社を囲うように光の壁が出現する。最後に自らの上に魔法陣を飛ばして、半球上の天井が完成する。結界が出来たのを確認すると、魔理沙はまた霊夢の所へ戻って行った。


「で、どうするんだ?」
「どうするって、まだ何も出来ないわよ」
「何も出来ないって……お前、何かしないとまた面倒になるだけじゃないか」
「そんな事云われてもねえ。まあ、そろそろ動こうとは思ってるわ」
「見当が付いてるのか?」
「まあ一応は。というより、こんな事するのって一人しか思い付かないし」


 それもそうだ、と魔理沙は云って笑った。そして自身も霊夢の隣に腰を落ち着けて、正面の林を見た。そこに丁度遣って来た異形が居る。見た所低級な妖怪であったから、魔理沙は特に気にする事もなく、何をするのかとその光景を見守っていた。霊夢も同様に、別段慌てた素振りを見せる事なくその光景を見ている。よもやこの結界が破られるはずがない。それは疑いようもない事実であると共に、二人を安心させる自信であった。


 ――だが。
 それは凡そ予想の範疇外に位置する展開によって打ち崩される事となった。


「何か、来るわね」
「この結界じゃ防ぐのは無理だな」


 二人の瞳は真剣さを帯びている。そして、立ち上がり臨戦態勢を取る。それが終わると間もなく、目の前の結界は派手に打ち破られた。同時に二人の前で無駄な足掻きを続けていた妖怪も、消し飛んだ。
 そこにはあるのは大きな足である。そしてその足の持ち主が成す影は、二人を等しく包む込む。上を見上げるまでもない。二人はその主を知っている。霊夢と魔理沙は同時に上空を仰いだ。――そこには伊吹萃香の、不敵な笑みがある。


「まさかこんな弱い結界で身を守ろうと思ってたんじゃないだろうね」


 その一言を上空に置き去りにして、萃香は一瞬の内にその巨体を霧散させた。そして次の瞬間には霊夢と魔理沙の二人の前に、本来の小さな姿を現した。霊夢は厄介な、と呟いた。魔理沙は不味いなと呟いた。とかく、目の前の小さき鬼の持つ力は凄まじい。昨夜の軍勢が可愛く思えるほどに、彼女一人が持つ戦力は巨大なのである。それを知り、そして今の不可解な現状を知っているからこそ、本来あるはずのなかった二人の警戒心は、萃香に注がれている。


「あんたがこんなに早く出てくるとはね」
「神出鬼没、そういう言葉があるだろう。私は不意打ちなんて恥ずかしい真似は出来ないけどね」
「それで、あんたはどっちなのかしら?」


 霊夢は密かな猜疑を持ってその問い掛けをする。萃香は不敵に笑ったまま口を開かない。魔理沙は常にどんな攻撃にも対応出来るように、体勢を整えている。――やがて萃香は腰に提げた瓢箪を手に持つと、その中の酒を飲み始めた。


「その答えを聞く前に殺されたらどうするのかね、人間は」
「簡単ね。死ななければ好いだけじゃない」
「はは、それも正解の一つだね。――で、どっちだと思う」
「それは聞いてみなければ判らないわ」


 くく、と萃香は喉を鳴らす。まるで読めない表情の裏に隠された答えは、まだ判らない。


「取って戦い勝っては喰らい、取って戦い負けては返し。浮世に透明、神出鬼没なるは鬼の性。今此処で攫われるのは何処ぞの人間か。取って食らうには些か面倒、けれど歯応えはある方が余程好い。でなければ饗宴には値しない」


 謡うように、萃香は云って見せる。そしてまた瓢箪を傾けてぐびりと酒を飲む。頬は色付いても、目に宿る光は鋭く、剣呑ではなく、確かな危険がある。微醺ですら感じさせぬその眼光は、既に答えを示し出した。霊夢と魔理沙は顔を見合わせる事もなく、宙に浮かび上がる。萃香はそれをすぐに追う事もせず、ただ見上げているだけである。


「悪いが取って喰われるのは性分じゃないんでな」
「返す物もないから、盗られる物は覚悟しなさいよ」


 二人は思い思いの言葉を口にして、魔具を或いは符を、懐から取り出す。そうして、下にある鬼の姿、――最早小さいとは云えぬほどの威厳をその身に纏う萃香を、強い眼差しで見据えた。


「――侮るなよ人間。蜜の力と疎の力が成す真の百鬼夜行、その目に収めて平伏すが好い!」

 

 

 

 

 

 


――続

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